DVや性暴力については、全国(内閣府、法務省)や各地方自治体による調査、また様々な観点から研究者が行っている実態調査などがあります。また、警察が事件として把握する件数(DV、ストーキング、虐待、犯罪など)や、配偶者暴力相談支援センターへの相談件数、裁判所の保護命令の件数などの面から状況をみる方法もあります。


1.実態調査

(1)内閣府 「男女間における暴力に関する調査」(令和2年)(層化2段無作為抽出で選んだ 全国20歳以上の男女5,000人を対象に調査票で行った調査)によると:
DVでは
女性の3.4%、男性1.5%が配偶者からの身体的暴力を「何度も」経験をしており、何らかのDV被害経験がある人(全体の22.5%)のうち、女性の約18.2%、男性の5.0%が、それによって「命の危険を感じた」と回答しています。これまでに交際相手がいた人のうち、交際相手からDVを受けた経験は、女性の16.7%、男性の8.1%で、そのうち、命の危険を感じた人は、女性が23.7%、男性が7.2%います。
 性暴力については、同調査では、「無理やりに性交等をされた被害経験」は女性 6.9 %  男性 1.0 %があったと回答しています。被害者のうち「警察に相談した」 (男女合計)人は5.6% (女性被害者の6.4% 男性はゼロ)しかいません。

DVの実態を調査でどのように把握すべきかの方法論については、ここ数十年の間で、世界の研究者の間で、議論が重ねられ、改善されようとしています。


*発生率について

 例えば本人が記入するアンケート調査で「怒鳴ったことがある」などという選択肢を選んで、それを「DV行為」として扱うような安易なものもありますが、本来の社会調査は、調査票の調査でも調査員が面談して質問し、調査票に記入するものです。精神的なDV、支配とコントロールの状態を聞き取るための、もう少し工夫された質問票などが、WHOの調査チームなどで作成され、同一の方法の調査が多くの国で行われ、比較されています。
 また、同じ「怒鳴った」「殴った」という行為があっても、一度きりの衝突、対等な関係性のカップルの中でのケンカと、DV的な支配・虐待を分けて分析しようという研究者の議論もあります。

(2)『ドメスティック・バイオレンス―実態・DV法解説・ビジョン』「夫(恋人)からの暴力」調査研究会 2002年 (有斐閣選書) *日本で初の実態調査
(3)フェミニストカウンセリング堺DV研究プロジェクトチーム『「夫・恋人(パートナー)等からの暴力について」調査報告書』1998年10月
(4)吉浜 美恵子, 秋山 弘子, 戒能 民江, ゆのまえ 知子, 林 文, 釜野 さおり『女性の健康とドメスティック・バイオレンス ーWHO国際調査に本調査結果報告書』2007年 新水社
(5)平成10年、東京都「女性に対する暴力」調査中の「夫やパートナーからの暴力」被害体験者面接調査 東京都生活文化局『「女性に対する暴力」調査報告書』平成10年3月
(6)内閣府「配偶者等からの暴力に関する事例調査」2002年(平成13年11月)
その他内閣府の各種調査のリストはこちら

◇様々な属性の人々のDV被害実態についての調査資料
(7)NPO法人OVA「性を問わないDV被害に関する実態調査と新しい相談体制の検討 」 2021年12月  
(8)「あらゆる性別を包括するドメスティック ・ バイオレンス政策への課題」北仲千里 国際基督教大学『ジェンダー&セクシュアリティ』 no.5, pp.95-109, 2010
シェルターネットの全国シェルターシンポジウムの分科会で議論するために2007年10-11月に全国の都道府県婦人相談所にLGBTのDV被害者の支援実態などについて調査を行ったもののまとめです。
(9)「性的マイノリティのパートナーからの暴力(DV)被害と相談行動に関する調査 : 第一次集計分析」釜野 さおり・北仲 千里・藤原 直子「LGBTsIPV研究プロジェクト」
(10)アジア・女性シェルターネット(ANWS)調査チームによる、各国の調査結果
北仲 千里「アジアにおける「ジェンダーに基づく暴力」の実態と対策―アジア・シェルターネットワークによる調査から」『国際ジェンダー学会誌』 15号 2017年12月
(11)アジア・女性シェルターネット(ANWS)調査チームによる、各国の調査結果
調査報告書「台湾・マレーシアにおける女性に対する暴力被害者支援の研究」(2016年3月)北仲 千里、井上 匡子、清末 愛砂、松村 歌子、李 妍淑
(12)デートDV調査レビュー
赤澤淳子「国内におけるデートDV研究のレビューと今後の課題」 『福山大学 人間文化学部紀要』 16 128-146, 2016年

◇性暴力の実態調査等
(13)齋藤梓・大竹裕子編著 『性暴力被害の実際 被害はどのように起き、どう回復するのか』金剛出版 2020年
(14)NPO法人しあわせなみだ 報告書「障害児者の性暴力が認められる社会へ
障がい児者への性暴力に関するアドボカシー事業 報告書 2022年4月
◇その他
 刑法(性犯罪)改正をめぐる法制審議会の中で様々に紹介された性暴力被害の実態や、対策についての情報は、こちらの審議会議事録で読むことができます。
◇男性の性被害について取り上げた文献
ガートナー『少年への性的虐待——男性被害者の心的外傷と精神分析治療』2005 作品社
宮地尚子『トラウマにふれる―心的外傷の身体論的転回』金剛出版 2020年

2.相談件数などについて

(1)警察庁のDV、ストーキングの件数発表はこちら
(2)DVの配偶者暴力相談支援センターへの相談件数の発表はこちら(内閣府ウェブサイト)
(3)裁判所のDV防止法保護命令 「司法統計」「民事・行政事件」と年度を選択して検索しましょう
(4)よりコンパクトにまとめられている情報を見たい場合は、男女共同参画白書
(5)内閣府「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを対象とした支援状況等調査」報告書」(令和2年3月)
(6)婦人相談所 婦人保護事業統計 厚生労働省 福祉行政報告例