DV(Domestic Violence/ドメスティックバイオレンス)とは?

 夫婦や恋人、好意を寄せた相手など、親密な関係にある人(または元の夫婦や恋人)からの虐待をドメスティック・バイオレンス(DV)といいます。脅迫、侮辱、非難、抑圧、殴るなどさまざまな方法で自由を奪われ、人間としての尊厳を否定され、支配されることです。

親からいじめられるのは、DVではないの?きょうだいから暴力をふるわれるのはDV?

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 Domestic=家庭内という意味なので、「DV=家庭内暴力だから、子どもへの親からの虐待などもDVと呼ぶのでは?」と誤解されがちですが、「児童虐待」が社会問題になった時よりも後になって、「大人の夫婦の間にも虐待がある」と言われはじめ、それで名前がつけられたのがDVです。

ですから、子どもの虐待や、子どもから親への暴力などには、この言葉は使いません。親子、介護する家族からの要介護者への虐待、きょうだいの間、子どもが親に暴力をふるう等、家庭内での様々な虐待・暴力をまとめて英語で呼ぶとしたら、「ファミリー・バイオレンス」という呼び方になります。

 令和2年度内閣府の「男女間の暴力調査」によると、女性の3.4%、男性1.5%が配偶者からの身体的暴力を「何度も」経験をしており、何らかのDV被害経験がある人(全体の22.5%)のうち、女性の約18.2%、男性の5.0%が、それによって「命の危険を感じた」と回答しています。これまでに交際相手がいた人のうち、交際相手からDVを受けた経験は、女性の16.7%、男性の8.1%で、そのうち、命の危険を感じた人は、女性が23.7%、男性が7.2%います。

 「生命の危険」に関わるようなDV加害はそれほど多い割合ではないとしても、家庭裁判所の婚姻関係事件申し立ての女性の側の「動機」に「DV的」なものが常に入ってくることを考慮すれば、“潜在的なDV問題”は、少なくはありません。

結婚している夫婦だけが DV?  

いいえ。交際関係や内縁関係であっても、DVです。英語ではDVA(Domestic Violence and Abuse DV・虐待)と呼んだり、IPV(Intimate Partner Violence 親密なパートナーからの暴力)、Dating Violence(交際している関係での暴力)などと呼ばれていたりします。

 交際相手からのDVを日本では「デートDV」と呼ぶことが広まっていますが。デートDVも、DVです。ただし、結婚しているかどうか、同居しているかどうかなどによって、法律で対応できる範囲には違いがあります。

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 職場の「上司と部下」「先生と生徒」の間の虐待は?

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職場やその他の立場を利用した虐待は、DVというよりは「ハラスメント」と呼ばれます。ハラスメントのケースの対応や、防止の義務は、会社や学校の方にあります。もし、それが未成年に対する教員やスポーツ・文化などの指導者からのハラスメントであれば、同時に児童虐待と考えることもできます。

 ふつうの夫婦喧嘩とはどうちがう?

どこの家族でも喧嘩はありますが、明らかに相手を一人の人間として尊重していない、虐待したり追い詰めたりしている関係ならば、それはただのけんかではなく、DVになります。普通の、お互いを大切に思っている夫婦やカップルであれば、一緒に暮らし、共に過ごしているうちに、お互いに影響受けあっていきます。

例えば、前は興味がなかった料理も、奥さんが作るので、だんだん美味しいと思うようになるとか、奥さんは興味がない話でも、夫が趣味のことを一生懸命やっているので、自分も一緒に付き合って、いつのまにかずいぶん詳しくなったとか。

それに本当に相手の嫌なこと、直してほしいことがあれば、対等な関係の夫婦だったらそれを話し合うことができます。しかし、DVの場合は、相手を尊重せず、一方的に支配し、自分の思う通りに従わせようとします。そして従わないと怖い目にあうので、被害者はいつも相手を怒らせないように気にしてびくびくしながら過ごすようになります。

DV は「男性から女性へ」だけ?

 そうではありません。性別に関係なく、親密な関係性での虐待は「DV」と定義されます。男性が被害者になることもありますし、同性カップルや、トランスジェンダーの当事者も経験することがあります。しかし、同時に、圧倒的多くのDVケースは、男性から女性に対して行われます。つまりこれは単なるその本人の性格の問題などの問題ではなく、男性を加害者にしやすい、女性が被害者になりやすい社会構造が影響しているということです。

そこで、DVを「女性に対する暴力」(Violence Against Women)「ジェンダーに基づく暴力」(Gender-based violence)の一つとして考えることが非常に重要になります。

 逆に、典型的でないケース(男性の被害者やLGBTのDV)は、ますます相談しにくかったり、支援が少なかったり、被害者本人も自分の受けている被害をDVと考えることが難しいなど、特有の困難があります。これもまた、社会のジェンダーやセクシュアリティの構造の反映と考えることもできます。