日本では、もちろん、人が人を暴力で傷つけたり、殺したりしたら犯罪として罰せられます。しかし、DVを特に悪質な行為だとして犯罪とする法律はありません。

 日本では、いわゆるDV防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)によって、DV(「配偶者からの暴力」)の定義や、被害者保護のための対策を定めています。また、行為によっては、ストーカー行為等規制法や、刑法の性犯罪などとしても対応することができる場合もあります。そして、それを相談するための相談センターについての女性支援のための新法(「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」)が作られました(2024年4月施行)。

主なポイント 

(1)「DV防止法」

  • DVの定義:DV=法律では「配偶者からの暴力」。性別にかかわりなく定義。身体的な暴力だけではなく、様々な行為もDVとする。(身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)
  • 相談センター:「配偶者暴力相談支援センター」で相談を受け、援助する。
  • 保護命令:DVの加害者に対し、裁判所が被害者やその家族親族などに「近づくな」「立ち去れ」「電話をかけるな」などの命令が出される。

*DV法が改正されます(2024年4月から施行)もっと詳しい内容は「法律や政策リスト」のページへ

内閣府 配偶者からの暴力被害者支援情報はこちら 

(2)相談支援センターについて

DV被害者の「一時保護」の決定や公的シェルターの運営を行っているのは、(DV防止法ではなく)売春防止法に基づいて設置されている各都道府県の「婦人相談所」です。この婦人相談所を中心とする「婦人保護事業」には限界や問題点があり、これに変わる新しい法制度(「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」)が制定されました。

もっと詳しい内容は「法律や政策リスト」のページへ

*公的シェルターと民間シェルター

  私たちのような民間シェルターが、DVの相談機関やシェルターの主な担い手だと誤解されている方もおられますが、日本のDV相談体制は、法律上は、公的な相談センターであり、公的なシェルター施設によってされる設計になっています。私たち民間団体は、それとは別に独自に、自主的に相談支援活動を行い、シェルター施設をもっていたりするものです。

  そして、私たちは公的な支援機関と連携して被害者を支援したいと思っているのですが、公的な支援機関にはいくつかの問題点があり、しかも近年だんだん質が低下しているという指摘が出てきています。それに対して、私たち民間団体は、被害者支援のために必要があると感じれば何でも、柔軟に支援をするため、まだ他の人には見えていない新しい問題を発見し、社会に発信したりもしています。しかし、民間シェルターは公的な財政助成はほんとうにわずかでしかないため、基本的にはボランティアで活動しており、施設やスタッフ数が小規模であるという弱点があり、また、全国すべての地域にあるわけでもありません。

  全国女性シェルターネットは、これまでも、公的相談支援機関の問題点についての声を集め、厚生労働大臣や内閣府などに要望、提言をするなどしてきました。

  • 2020年9月 私たちが目指す「女性に対する暴力 被害者支援」(特にDV編)

  提言本文資料 

  解説資料 

2022年に、ついに女性支援法が国会で成立し、より本格的な女性への相談支援を行う法律ができ、2024年度から、それが施行されます。そこでは、相談支援の理念や支援の強化に加え、民間団体との対等な協働も掲げられています。

  そこで、私たち全国女性シェルターネットは、女性支援法の国の基本方針に対するパブリックコメントへの意見提出や、各都道府県の基本計画策定にあたっての提言を発表しています。

(3)「ストーカー行為規制法」

また、DVでもそうでない相手からのストーキングでも、「ストーカー行為規制法」によっても、警察が相談にのり、助言や相手への警告など、悪化をふせぐための援助をします。

警察庁ウェブサイト 

刑法の性犯罪規定が改正されました(2023年7月13日)

 もっと詳しい内容は「法律や政策リスト」のページへ

(4)別居後の親子面会交流や親権・監護権、養育費など

 現在、別居や離婚後の子の親権や親子の面会交流、養育費のことなどが、法制審議会家族法制部会で議論され、今後法改正などが行われる可能性が出てきています。

 この問題は、2022年のシェルターシンポジウムin 釧路でとりあげられました。

 その時のランディ・バンクロフトさんの講演の動画です。

これに関する他団体等のリンク