DVの問題は、世界的に「女性に対する暴力(Violence against women、VAW)」「ジェンダーに基づく暴力(Gender-based Violence, GBV, Gender Violence)」の一つとして捉えられています。「女性に対する暴力」とは、女性や少女が、女性であるために、DVやセクシュアル・ハラスメント、ストーキングや性暴力の被害にとても遭いやすい、という状況を指している言葉です。

 DVは、1990年代に国連が「女性に対する暴力撤廃宣言」(1993年国連総会)を採択したのを受けて、大きく注目されるようになり、その後、世界の多くの国で、DV防止法などが作られるようになっていきました。

「女性に対する暴力(Violence against women)」とは、「性別に基づく暴力行為であって、女性に対して身体的、性的、もしくは心理的な危害または苦痛となる行為、あるいはそうなる恐れのある行為であり、さらにそのような行為の威嚇、強制もしくはいわれのない自由の剥奪をも含み、それらが公的生活で起こるか私的生活で起こるかを問わない」 [第48回国連総会「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」,1993]

 女性に対する暴力には、DVだけでなく、女性性器切除や戦時下の性暴力、軍隊や警察からの暴力や性暴力、家族親族による性虐待、名誉殺人や幼児婚、ダウリーなど、さまざまなものが含まれます。いわゆる先進国の社会での主要な女性に対する暴力は、性暴力全般、DV、セクシュアル・ハラスメント、ストーキングなどがあります。また、セックスワーカーへの蔑視や攻撃、セクシュアル・マイノリティへの攻撃も社会のジェンダーを背景として行われるもので、ジェンダーによる暴力と言えるでしょう。

 男尊女卑の風潮や、経済力や社会的発言力などが男性に偏っている社会であればあるほど、男性は加害者になりやすく、被害者は圧倒的に女性になっていきます。ですから、DVや性暴力対策は、(性別やセクシュアリティを問わず)すべての人が被害者になるものとしての取組が必要であり、その上にさらに「女性に対する暴力」対策として、現状をふまえ、構造を変えていくための相談や防止の特別の対策がなされる必要があります。

 一部の男性が、女性を支配したい、女性に対して威張りたい、女性を虐待してもよいのだ、と考えることを促し、許容している社会構造を変える必要があります。

 男性が妻をいじめても、周りが見て見ぬふりをし、そのことを問題だとはあまり感じないという世間の風潮を変えていく必要があります。DVや虐待、性暴力の加害者は、明確に批判され、罰せられるなど責任を問われる社会にすべきです。

 女性が、DVから抜け出すことができ、被害に遭ったことを周囲からも責められたりすることがなく、安心して相談ができ、支援が受けられやすく、新しい生活を自分で歩んでいける社会にすべきです。また、女性が経済的に自立できる社会にしていくべきです。

 「女性を殴る男性は、女性に、彼が望むやり方で関係がすすみ、または究極的に彼が権力を持っていることを女性に思いしらせたい。」Schechter(1982)

 「DV加害者は(階級や人種にかかわらず)彼は家長としての権利を持っていると考えている。(中略)妻を支配しコントロールすること、そして妻を殴ることは、彼の命令への引き続く服従の保障と、「傷ついた」家父長制的男性性を構築する資源との両方を確実なものにする。このようにして、妻虐待はますます妻(またはそうしようと考え)に対するコントロール、つまり家事、育児、性行動へのコントロールを強める。」Messerschmitt (1993)