DVとは
2.様々な「暴力」の形。支配とコントロール
DVを表現する時に「暴力」という言葉が使われることが多いので、殴る・蹴るなどの身体的な暴力をDVと呼ぶのだと理解されがちですが、DVの本質は、虐待で、相手人格を尊重せず、支配・コントロールすることです。ですから、その虐待や支配は様々な方法を用いて行われます。
あなたの体験していることや、あなたの知り合いに起きていることがDVにあたるのかどうか知りたい方は、「チェックリスト」を読んでみてください。
殴る・蹴るなどの身体的なものだけでなく、心理的、性的、経済的、社会的なものも含まれます。また、子どもを利用した暴力もあります。(なお、これらの「暴力」のタイプも別々に分けることが必ずしも正しいわけではなく、虐待や支配を表現するために、便宜上このようなタイプ分けをしているものです。)
身体的暴力・・・殴る、蹴る、髪を引っ張る、物を投げつける など
精神的暴力・・・大声で怒鳴る、罵る、脅す、無視する、殴る素振りや物を投げるふりをして脅かす など
性的暴力・・・・性行為を強要する、裸の写真や動画を撮られる、避妊に協力しな い、中絶を強要する、AVビデオと同じことをさせようとする など
経済的暴力・・・生活費を渡さない、働きに行かせない、借金をする・借金させる など
社会的暴力・・・GPSをつけて行動を監視する、交友関係を制限する など
子どもを利用した暴力・・・子どもの前で馬鹿にする、子どもに馬鹿にするように言う、子どもに無視をするように言う など
DVでは、いろんな方法をつかって、相手を自分のペットか奴隷のように虐待し、相手の気力や自己決定を奪っていきます。時にはそれは、「身体的暴力」(殴る、蹴る、熱湯をかける、首を絞める)であったり、ちゃぶ台をひっくり返す、物を投げたり、壊したりするというような暴力になることもあり、命の危険があることもあります。しかしそういうものだけがDVなのではありません。相手がいつどこで何をしているか、しょっちゅうLINE・携帯などで行動を報告させる、許可をもらわないと自由に他人には会えなかったり、外出を制限する、着る服についても命令する、すぐ浮気を疑うというような「行動の監視・強い束縛」がされたりもします。こうした「精神的DV」は、最近は「モラル・ハラスメント(モラハラ)」とも呼ばれています。監視や束縛の他にも、ひどい言葉で相手をバカにする、急にむちゃくちゃなことを言って相手を振り回す、怒鳴る、ストレスのやつあたりをする、説教が止まらないなどの行動もあります。身体的DVはなくても、馬鹿にし、ねちねちいじめる精神的DVによっても、家庭は安らぎの場ではなく地獄になっていきます。強く束縛し、追及してくるDVもあれば、逆にまったく口をきかない、何を聞いても返事がない、無視される、ご飯を作ってもゴミ箱に捨てられるという場合もあります。病気で具合が悪くなっても病院に連れて行ってくれないというようなことは、やはりひどいことだと言えるのではないでしょうか。
そして、「経済的なDV」。毎月の生活費をくれない、給料をいくらもらっているのかも聞けない関係、貯金がいくらあるかも教えてもらえない、勝手に高価な買い物(車や家など)をしてしまう、相談もなく借金に巻き込まれるなどのこともあります。今回の10万円の特別給付金で、家族全員の給付金を世帯主が「自分のものだ」と勝手に使ってしまうという経済的DVが問題となりました。
Q.モラハラ(モラル・ハラスメント)とは?
「モラル・ハラスメント」の「モラル」とは、(「道徳」ではなく)精神的な、という意味で、上で言う精神的暴力(虐待)のことを指します。身体的な暴力は無いけれどねちねちと人格攻撃をして追い詰めたり、長々と説教したり、無視したりという行動を「モラル・ハラスメント」というキーワードでまとめている書籍が出版されており、そうした本にはDVと、職場のパワハラにおけるモラハラの両方が紹介されていたりします。
最近は「モラハラ」「モラ夫」などというキーワードやその具体例などが本やインターネットで紹介されることによって、「これもDVなんだ」とか、モラハラをする相手の方に問題があるのだ、ということが理解されやすくなってきています。
権力と支配の車輪
出典:エレン・ペンス、マイケル・ペイマー著『暴力男性の教育プログラムードゥールース・モデル』(誠信書房 2004年)
これは、DV加害者更生プログラムとして知られる「ドゥルース・モデル」で用いられている「権力と支配の車輪」のイメージ図です。様々な方法を使いながら、DVでは相手の逆らう力を奪い、自分の言う通りに支配していきます。
反対に、対等な関係性の図が、こちらです。
「平等の車輪」