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DVとは

7.実態の把握

 DVや性暴力については、全国(内閣府、法務省)や各地方自治体による調査、また様々な観点から研究者が行っている実態調査などがあります。

 また、警察が事件として把握する件数(DV、ストーキング、虐待、犯罪など)や、配偶者暴力相談支援センターへの相談件数、裁判所の保護命令の件数などの面から状況をみる方法もあります。

例えば、

平成29年12月 内閣府の「男女間の暴力調査」(全国 20 歳以上の男女 標本数 5,000 人 有効回収数(率) 3,376 人(67.5%))によると、女性の13.8%、男性4.8%が配偶者からの身体的暴力を「何度も」経験をしており、何らかのDV被害経験がある人のうち、女性の約15%、男性の3.1%が、それによって「命の危険を感じた」と回答しています。

 性暴力については、同調査では、

「むりやり性行為をされた経験」があった人: 4.9% 164 人

女性 7.8% (その内、「18歳未満で被害にあった」20.5% その内1.4%が「同性から」)

男性 1.5%  (その内、「18歳未満で被害にあった」30.4% その内17.4%が「同性から」)

という結果がでており、

その相手は(複数回答)

「配偶者・元配偶者」23.8%「交際相手・元交際相手」23.8% で合わせると47.6%が “親密な関係”からの性暴力、つまり性的DVです。

次いで

「職場・アルバイト先の関係者(上司、同僚、部下、取引先の相手など)」14.0%

「学校・大学の関係者 (教職員、先輩、同級生、クラブ活動の指導者 など)」6.1%

「職場・アルバイト先の客」3.0%で、合計すると23.1%が“学校や職場”の関係者からの被害であり、

「きょうだい」4.9% 「親」2.4% 「養親・継親又は親の交際相手」2.4%

「上記以外の親戚」2.4% など、合計すると12.1%が“性的虐待”と捉えられるものです。

これらの被害者のうち、「警察に相談した」  3.7% 「誰にも相談しなかった」56.1%となっています。

http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/index.html

 DVの実態を調査でどのように把握すべきかの方法論については、ここ数十年の間で、世界の研究者の間で、議論が重ねられ、改善されようとしています。

◆発生率について

 例えば本人が記入するアンケート調査で「怒鳴ったことがある」などという選択肢を選んで、それを「DV行為」として扱うような安易なものもありますが、本来の社会調査は、調査票の調査でも調査員が面談して質問し、調査票に記入するものです。精神的なDV、支配とコントロールの状態を聞き取るための、もう少し工夫された質問票などが、WHOの調査チームなどで作成され、同一の方法の調査が多くの国で行われ、比較されています。

 また、同じ「怒鳴った」「殴った」という行為があっても、一度きりの衝突、対等な関係性のカップルの中でのケンカと、DV的な支配・虐待を分けて分析しようという研究者の議論もあります。

◆被害の影響について

 被害者の心理やそのダメージなどについての精神医学的・心理的な研究なども研究者によってなされています。

 

DVとは?

 


1.言葉の意味

DV

 

 

 

配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者からの虐待をドメスティック・バイオレンス(DV)と言います。夫婦や恋人、好意を寄せた相手など、親密な関係にある人(または元の夫婦や恋人)からの虐待をDVといいます。脅迫、侮辱、非難、抑圧、殴るなどさまざまな方法で自由を奪われ、人間としての尊厳を否定され、支配されることです。

 

 

 

子ども

 

 

 

 Domestic=家庭内という意味なので、「DV=家庭内暴力だから、子どもへの親からの虐待などもDVと呼ぶのでは?」と誤解されがちですが、「児童虐待」が社会問題になった時よりも後になって、「大人の夫婦の間にも虐待がある」と言われはじめ、それで名前がつけられたのがDVです。ですから、子どもの虐待や、子どもから親への暴力などには、この言葉は使いません。親子、介護する家族からの要介護者への虐待、きょうだいの間、子どもが親に暴力をふるう等、家庭内での様々な虐待・暴力をまとめて英語で呼ぶとしたら、「ファミリー・バイオレンス」という呼び方になります。

 平成29年度内閣府の「男女間の暴力調査」によると、女性の13.8%、男性4.8%が配偶者からの身体的暴力を「何度も」経験をしており、何らかのDV被害経験がある人のうち、女性の約15%、男性の3.1%が、それによって「命の危険を感じた」と回答しています。

 「生命の危険」に関わるようなDV加害はそれほど多い割合ではないとしても、家庭裁判所の婚姻関係事件申し立ての女性の側の「動機」に「DV的」なものが常に入ってくることを考慮すれば、“潜在的なDV問題”は、少なくはありません。

 

 

 

結婚している夫婦

 

  

 いいえ。交際関係や内縁関係であっても、DVです。英語ではDVA(Domestic Violence and Abuse DV・虐待)と呼んだり、IPV(Intimate Partner Violence 親密なパートナーからの暴力)、Dating Violence(交際している関係での暴力)などと呼ばれていたりします。

 交際相手からのDVを日本では「デートDV」と呼ぶことが広まっていますが。デートDVも、DVです。ただし、結婚しているかどうか、同居しているかどうかなどによって、法律で対応できる範囲には違いがあります。

 

職場

 

 

 職場やその他の立場を利用した虐待は、DVというよりは「ハラスメント」と呼ばれます。ハラスメントのケースの対応や、防止の義務は、会社や学校の方にあります。もし、それが未成年に対する教員やスポーツ・文化などの指導者からのハラスメントであれば、同時に児童虐待と考えることもできます。

 

 

普通の夫婦喧嘩

 

 

 どこの家族でも喧嘩はありますが、明らかに相手を一人の人間として尊重していない、虐待したり追い詰めたりしている関係ならば、それはただのけんかではなく、DVになります。普通の、お互いを大切に思っている夫婦やカップルであれば、一緒に暮らし、共に過ごしているうちに、お互いに影響受けあっていきます。例えば、前は興味がなかった料理も、奥さんが作るので、だんだん美味しいと思うようになるとか、奥さんは興味がない話でも、夫が趣味のことを一生懸命やっているので、自分も一緒に付き合って、いつのまにかずいぶん詳しくなったとか。それに本当に相手の嫌なこと、直してほしいことがあれば、対等な関係の夫婦だったらそれを話し合うことができます。しかし、DVの場合は、相手を尊重せず、一方的に支配し、自分の思う通りに従わせようとします。そして従わないと怖い目にあうので、被害者はいつも相手を怒らせないように気にしてびくびくしながら過ごすようになります。

 

 

DVは

 

 

 そうではありません。性別に関係なく、親密な関係性での虐待は「DV」と定義されます。男性が被害者になることもありますし、同性カップルや、トランスジェンダーの当事者も経験することがあります。しかし、同時に、圧倒的多くのDVケースは、男性から女性に対して行われます。つまりこれは単なるその本人の性格の問題などの問題ではなく、男性を加害者にしやすい、女性が被害者になりやすい社会構造が影響しているということです。そこで、DVを「女性に対する暴力」「ジェンダーに基づく暴力」の一つとして考えることが非常に重要になります。

 逆に、典型的でないケース(男性の被害者やLGBTのDV)は、ますます相談しにくかったり、支援が少なかったり、被害者本人も自分の受けている被害をDVと考えることが難しいなど、特有の困難があります。これもまた、社会のジェンダーやセクシュアリティの構造の反映と考えることもできます。


2.様々な「暴力」の形。支配とコントロール

 DVを表現する時に「暴力」という言葉が使われることが多いので、殴る・蹴るなどの身体的な暴力をDVと呼ぶのだと理解されがちですが、DVの本質は、虐待で、相手人格を尊重せず、支配・コントロールすることです。ですから、その虐待や支配は様々な方法を用いて行われます。

 あなたの体験していることや、あなたの知り合いに起きていることがDVにあたるのかどうか知りたい方は、「チェックリスト」を読んでみてください。

 殴る・蹴るなどの身体的なものだけでなく、心理的、性的、経済的、社会的なものも含まれます。また、子どもを利用した暴力もあります。(なお、これらの「暴力」のタイプも別々に分けることが必ずしも正しいわけではなく、虐待や支配を表現するために、便宜上このようなタイプ分けをしているものです。)

身体的暴力・・・殴る、蹴る、髪を引っ張る、物を投げつける など
精神的暴力・・・大声で怒鳴る、罵る、脅す、無視する、殴る素振りや物を投げるふりをして脅かす など
性的暴力・・・・性行為を強要する、裸の写真や動画を撮られる、避妊に協力しな い、中絶を強要する、AVビデオと同じことをさせようとする など
経済的暴力・・・生活費を渡さない、働きに行かせない、借金をする・借金させる  など
社会的暴力・・・GPSをつけて行動を監視する、交友関係を制限する など
子どもを利用した暴力・・・子どもの前で馬鹿にする、子どもに馬鹿にするように言う、子どもに無視をするように言う など

 DVでは、いろんな方法をつかって、相手を自分のペットか奴隷のように虐待し、相手の気力や自己決定を奪っていきます。時にはそれは、「身体的暴力」(殴る、蹴る、熱湯をかける、首を絞める)であったり、ちゃぶ台をひっくり返す、物を投げたり、壊したりするというような暴力になることもあり、命の危険があることもあります。しかしそういうものだけがDVなのではありません。相手がいつどこで何をしているか、しょっちゅうLINE・携帯などで行動を報告させる、許可をもらわないと自由に他人には会えなかったり、外出を制限する、着る服についても命令する、すぐ浮気を疑うというような「行動の監視・強い束縛」がされたりもします。こうした「精神的DV」は、最近は「モラル・ハラスメント(モラハラ)」とも呼ばれています。監視や束縛の他にも、ひどい言葉で相手をバカにする、急にむちゃくちゃなことを言って相手を振り回す、怒鳴る、ストレスのやつあたりをする、説教が止まらないなどの行動もあります。身体的DVはなくても、馬鹿にし、ねちねちいじめる精神的DVによっても、家庭は安らぎの場ではなく地獄になっていきます。強く束縛し、追及してくるDVもあれば、逆にまったく口をきかない、何を聞いても返事がない、無視される、ご飯を作ってもゴミ箱に捨てられるという場合もあります。病気で具合が悪くなっても病院に連れて行ってくれないというようなことは、やはりひどいことだと言えるのではないでしょうか。                               

 そして、「経済的なDV」。毎月の生活費をくれない、給料をいくらもらっているのかも聞けない関係、貯金がいくらあるかも教えてもらえない、勝手に高価な買い物(車や家など)をしてしまう、相談もなく借金に巻き込まれるなどのこともあります。今回の10万円の特別給付金で、家族全員の給付金を世帯主が「自分のものだ」と勝手に使ってしまうという経済的DVが問題となりました。

Q.モラハラ(モラル・ハラスメント)とは?                   
 「モラル・ハラスメント」の「モラル」とは、(「道徳」ではなく)精神的な、という意味で、上で言う精神的暴力(虐待)のことを指します。身体的な暴力は無いけれどねちねちと人格攻撃をして追い詰めたり、長々と説教したり、無視したりという行動を「モラル・ハラスメント」というキーワードでまとめている書籍が出版されており、そうした本にはDVと、職場のパワハラにおけるモラハラの両方が紹介されていたりします。

 最近は「モラハラ」「モラ夫」などというキーワードやその具体例などが本やインターネットで紹介されることによって、「これもDVなんだ」とか、モラハラをする相手の方に問題があるのだ、ということが理解されやすくなってきています。

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権力と支配の車輪

出典:エレン・ペンス、マイケル・ペイマー著『暴力男性の教育プログラムードゥールース・モデル』(誠信書房 2004年)

 これは、DV加害者更生プログラムとして知られる「ドゥルース・モデル」で用いられている「権力と支配の車輪」のイメージ図です。様々な方法を使いながら、DVでは相手の逆らう力を奪い、自分の言う通りに支配していきます。

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 反対に、対等な関係性の図が、こちらです。

「平等の車輪」


3.「女性に対する暴力」とは?

 DVの問題は、世界的に「女性に対する暴力(Violence against women、VAW)」「ジェンダーに基づく暴力(Gender-based Violence, GBV, Gender Violence)」の一つとして捉えられています。「女性に対する暴力」とは、女性や少女が、女性であるために、DVやセクシュアル・ハラスメント、ストーキングや性暴力の被害にとても遭いやすい、という状況を指している言葉です。

 DVは、1990年代に国連が「女性に対する暴力撤廃宣言」(1993年国連総会)を採択したのを受けて、大きく注目されるようになり、その後、世界の多くの国で、DV防止法などが作られるようになっていきました。

「女性に対する暴力(Violence against women)」とは、「性別に基づく暴力行為であって、女性に対して身体的、性的、もしくは心理的な危害または苦痛となる行為、あるいはそうなる恐れのある行為であり、さらにそのような行為の威嚇、強制もしくはいわれのない自由の剥奪をも含み、それらが公的生活で起こるか私的生活で起こるかを問わない」 [第48回国連総会「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」,1993]

 女性に対する暴力には、DVだけでなく、女性性器切除や戦時下の性暴力、軍隊や警察からの暴力や性暴力、家族親族による性虐待、名誉殺人や幼児婚、ダウリーなど、さまざまなものが含まれます。いわゆる先進国の社会での主要な女性に対する暴力は、性暴力全般、DV、セクシュアル・ハラスメント、ストーキングなどがあります。また、セックスワーカーへの蔑視や攻撃、セクシュアル・マイノリティへの攻撃も社会のジェンダーを背景として行われるもので、ジェンダーによる暴力と言えるでしょう。

 男尊女卑の風潮や、経済力や社会的発言力などが男性に偏っている社会であればあるほど、男性は加害者になりやすく、被害者は圧倒的に女性になっていきます。ですから、DVや性暴力対策は、(性別やセクシュアリティを問わず)すべての人が被害者になるものとしての取組が必要であり、その上にさらに「女性に対する暴力」対策として、現状をふまえ、構造を変えていくための相談や防止の特別の対策がなされる必要があります。

 一部の男性が、女性を支配したい、女性に対して威張りたい、女性を虐待してもよいのだ、と考えることを促し、許容している社会構造を変える必要があります。

 男性が妻をいじめても、周りが見て見ぬふりをし、そのことを問題だとはあまり感じないという世間の風潮を変えていく必要があります。DVや虐待、性暴力の加害者は、明確に批判され、罰せられるなど責任を問われる社会にすべきです。

 女性が、DVから抜け出すことができ、被害に遭ったことを周囲からも責められたりすることがなく、安心して相談ができ、支援が受けられやすく、新しい生活を自分で歩んでいける社会にすべきです。また、女性が経済的に自立できる社会にしていくべきです。

 「女性を殴る男性は、女性に、彼が望むやり方で関係がすすみ、または究極的に彼が権力を持っていることを女性に思いしらせたい。」Schechter(1982)

 「DV加害者は(階級や人種にかかわらず)彼は家長としての権利を持っていると考えている。(中略)妻を支配しコントロールすること、そして妻を殴ることは、彼の命令への引き続く服従の保障と、「傷ついた」家父長制的男性性を構築する資源との両方を確実なものにする。このようにして、妻虐待はますます妻(またはそうしようと考え)に対するコントロール、つまり家事、育児、性行動へのコントロールを強める。」Messerschmitt (1993)


4.「シェルター」とは?

 世界中で、「シェルター」はDVの被害者支援のキーワードとなっています。

  DVを含む家庭内暴力は、生活の場である家庭で被害を受けるため、その被害から逃れようとすると、住むところに困ります。また、緊急に逃げ出したり、家から追い出されたりした場合、今夜、すぐに泊まれるところが必要になります。そのため、DVやその他の家庭内暴力の被害者支援には、滞在場所や住宅の支援は必要不可欠なものです。

 また、DVの加害者は、支配を続けたい、また自分がそんな虐待を行っていることを周囲に知られたくないので、「別れる」というと、何とかよりを戻して関係を続けようとします。

 DV加害者は家族を「自分のもの」だと思っているため、相手が自分の意志で去っていくことを受け入れられません。「別れましょう」と言われると、何もなかったことにしたいので、「戻ってきていいよ」というし、それでも別れると言われると、「ばかにされた」「裏切られた」と受けとり、どこまでも探し出し、追いかけて連れ戻そうとします。実家に逃げることは、場所がわかっているので安全ではありません。最悪の場合は「別れ話のもつれ」殺人事件が起きてしまいます。ですから、DVとストーカーは、かなり繋がっている問題なのです。

 加害者はどこまでも探し、連れ戻しにくるので、「シェルター」(場所が秘密の避難所)が必要となります。 

 「シェルター」(shelter, refuge)は、したがって、狭い意味では、緊急に被害者が逃げ込めて、場所が秘密の滞在場所、という意味です。ですが、広い意味では、DV被害者を支援する活動や組織をシェルターと呼んでいます。

 また、滞在場所としてのシェルターは、緊急に相手から隠れて逃げ込むための安全な場である「緊急シェルター」もありますが、その後、新しい生活を作っていく初期の段階に住む施設である「中長期的シェルター」「ステップハウス」などもあります。

日本では、公的施設、または公的支援がなされている施設としての緊急シェルターと中長期的なシェルターにあたるもの と、民間団体が自主的に作って運営しているシェルター(緊急シェルター、中長期的なシェルター)とがあります。

全国女性シェルターネットの「シェルター」とは、こうしたDV被害者への相談支援活動をしている民間団体であることを示しています。

 


 日本では、もちろん、人が人を暴力で傷つけたり、殺したりしたら犯罪として罰せられます。しかし、DVを特に悪質な行為だとして犯罪とする法律はありません。(グローバル・スタンダードの一つである「イスタンブール条約」では、処罰することを求めています)。

 日本では、いわゆるDV防止法(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)によって、DV(「配偶者からの暴力」)の定義や、被害者保護のための対策を定めています。

詳しくは、内閣府男女共同参加局「被害者支援情報」

http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/index.html

主なポイント 

DVの定義:性別にかかわりなく定義。身体的な暴力だけではなく、様々な行為もDVとする。

相談センター:「配偶者暴力相談支援センター」で相談を受け、援助する。

保護命令:DVの加害者に対し、裁判所が被害者やその家族親族などに「近づくな」「立ち去れ」「電話をかけるな」などの命令が出される。

「保護命令」の手続などの詳しい情報は、裁判所のホームページhttps://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section09/dv/index.html

  • DV被害者の「一時保護」の決定や公的シェルターの運営を行っているのは、(DV防止法ではなく)売春防止法に基づいて設置されている各都道府県の「婦人相談所」です。 この婦人相談所を中心とする「婦人保護事業」には限界や問題点があり、現在、これに変わる新しい法制度を作ることを目指して検討を進める方針が、政府で決定されています。

 また、DVでもそうでない相手からのストーキングでも、「ストーカー行為規制法」によっても、警察が相談にのり、悪化をふせぐための援助をします。

警察庁ウェブサイト

http://www.npa.go.jp/cafe-mizen/


6.性暴力(sexual violenvce, sexual assault)とは

 性暴力とは望まない、合意していない性的な行為すべてのことです。 

 「性暴力」と、警察で扱う「性犯罪」とは必ずしも同じとは限りません。現在の日本の法律で性犯罪として扱われるものは、性暴力被害のごくごく一部です。

・性暴力被害は、さまざまなタイプのものがあります。

・性暴力被害の当事者は大人も子どもも、性別にかかわらず存在します。

強制の方法として、

暴力や「殺すぞ」などという脅迫によって行われるもの

権力や影響力など、立場を利用して行われるもの

お酒を飲ませたり、麻酔をしたりして意識を失わせたり、抵抗できない状態でなされ

るもの などがあり、

性的行為の内容では

性器の性器への挿入・性交行為、口や肛門への性器や指、物なのどの挿入行為

性器や体を触る、脱がせる行為

触ったり、覗いたり、性器を見せたり、いたずら電話やからかい、オンラインストーカー

性的な画像を見せる、裸や性行為の写真や動画などを同意なく撮る、ネットなどで拡散する、商品として販売する

などの行為もあります

誰から?様々な関係の相手からの加害・被害があります。

見知らぬ人から  知っている人から  友人の友人

家族(親きょうだい)、親戚、配偶者、恋人から被害を受ける

誰に? 何人で?

大人が子どもに

子どもどうし

大人どうし

男性が女性に

男性が男性に

女性が女性に

相手が性的マイノリティである(ではないかと思う)ことを理由に

1対1で

複数の人から集団で

何回?

一度きりの行為 から、何度も繰り返し被害にあうこともあり、

長期にわたる支配・性的服従もあります。

このうち、夫婦や恋人などからの性暴力被害はDVであり、性的DVは性暴力でもあります。


7.実態の把握

 DVや性暴力については、全国(内閣府、法務省)や各地方自治体による調査、また様々な観点から研究者が行っている実態調査などがあります。

 また、警察が事件として把握する件数(DV、ストーキング、虐待、犯罪など)や、配偶者暴力相談支援センターへの相談件数、裁判所の保護命令の件数などの面から状況をみる方法もあります。

例えば、

平成29年12月 内閣府の「男女間の暴力調査」(全国 20 歳以上の男女 標本数 5,000 人 有効回収数(率) 3,376 人(67.5%))によると、女性の13.8%、男性4.8%が配偶者からの身体的暴力を「何度も」経験をしており、何らかのDV被害経験がある人のうち、女性の約15%、男性の3.1%が、それによって「命の危険を感じた」と回答しています。

 性暴力については、同調査では、

「むりやり性行為をされた経験」があった人: 4.9% 164 人

女性 7.8% (その内、「18歳未満で被害にあった」20.5% その内1.4%が「同性から」)

男性 1.5%  (その内、「18歳未満で被害にあった」30.4% その内17.4%が「同性から」)

という結果がでており、

その相手は(複数回答)

「配偶者・元配偶者」23.8%「交際相手・元交際相手」23.8% で合わせると47.6%が “親密な関係”からの性暴力、つまり性的DVです。

次いで

「職場・アルバイト先の関係者(上司、同僚、部下、取引先の相手など)」14.0%

「学校・大学の関係者 (教職員、先輩、同級生、クラブ活動の指導者 など)」6.1%

「職場・アルバイト先の客」3.0%で、合計すると23.1%が“学校や職場”の関係者からの被害であり、

「きょうだい」4.9% 「親」2.4% 「養親・継親又は親の交際相手」2.4%

「上記以外の親戚」2.4% など、合計すると12.1%が“性的虐待”と捉えられるものです。

これらの被害者のうち、「警察に相談した」  3.7% 「誰にも相談しなかった」56.1%となっています。

http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/index.html

 DVの実態を調査でどのように把握すべきかの方法論については、ここ数十年の間で、世界の研究者の間で、議論が重ねられ、改善されようとしています。

◆発生率について

 例えば本人が記入するアンケート調査で「怒鳴ったことがある」などという選択肢を選んで、それを「DV行為」として扱うような安易なものもありますが、本来の社会調査は、調査票の調査でも調査員が面談して質問し、調査票に記入するものです。精神的なDV、支配とコントロールの状態を聞き取るための、もう少し工夫された質問票などが、WHOの調査チームなどで作成され、同一の方法の調査が多くの国で行われ、比較されています。

 また、同じ「怒鳴った」「殴った」という行為があっても、一度きりの衝突、対等な関係性のカップルの中でのケンカと、DV的な支配・虐待を分けて分析しようという研究者の議論もあります。

◆被害の影響について

 被害者の心理やそのダメージなどについての精神医学的・心理的な研究なども研究者によってなされています。


8.国際社会でのとりくみ

◆SDGs

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  国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」 目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図るにおいても、女性に対する暴力が言及されています。

(UN Womenのウェブサイトより)

 目標5「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」は、女性に対する差別、暴力、有害な慣行に終止符を打ち、介護や家事などの無償労働を認識・評価し、意思決定における参加とリーダーシップの機会を確保し、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを保証するためのさまざまなターゲットを掲げています。また、女性に対し、経済的資源への同等の権利を与えるために改革に取り組み、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化し、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを促進するための法制度を採用することをターゲットとしています。」

 「女性はSDGsのすべての分野において非常に重要な役割を担っており、多くのターゲットが女性の平等とエンパワーメントを目的、および解決策の一部と捉えています。目標5は専らジェンダー平等と女性のエンパワーメントを達成するために設けられたものであることから、独立したジェンダー目標として知られています。

 世界中で女性の権利を保障するためには、大幅な法改正が必要です。2014年までに143カ国という記録的な数の国々が憲法において男女間の平等を保障している中、52の国は未だ取り組んでいません[i]。多くの国では、ジェンダー差別は今なお法的・社会規範の中に存在しているのです。

 明らかなジェンダー格差は、経済的そして政治的な範囲においても見てとれます。ジェンダー平等に向けて今まで進歩が見られたところもあるものの、労働市場において、女性は男性と比べ世界平均で24% 低い収入を得ています[ii]。2015年8月時点で、女性の国会議員は全体のたった22%です。1995年の11.3%からわずかの増加です。

 一方、女性に対する暴力は、その他の分野で称賛に値する進歩を遂げた国も含め、すべての国に蔓延しています。世界中で、35%の女性がパートナーを含む男性から身体的・性的暴力を受けた経験があると報告されています[。ミレニアム開発目標には女性に対する暴力に関する記載がなかったことを受け、その指摘をする多くの人々の声にUN Womenも賛同しました。

 女性はすべての分野において平等な権利を有しています。これは法制度全体に備わっているべきであり、クォータ制の導入といった積極的な方法を含む法の履行において守られるべきです。生活のすべてはジェンダー平等と関連しているため、ジェンダー差別が見受けられるときにはすぐにその根を刈り取る努力がなされなければなりません。

 UN Womenはジェンダー平等に関するすべてのプログラムにおいて、女性と女児のエンパワーメントに取り組みます。女性の政治参画とリーダーシップ、そして経済的エンパワーメントは中心となる目標です。UN Womenはより多くの女性が票を得て政治家となるよう、また、投票に行けるようサポートしています。女性が抱える無償労働の負担を認識し、削減し、そして再配分する必要性を強調しつつ、女性がまっとうな仕事に就き、資産を蓄え、制度や公共政策に影響を与えるように支援も行っています。紛争予防や平和・安全保障を確保したりなど、人道的活動における女性の役割とリーダーシップも推進しています。また、女性に対する暴力の原因と結末に対する意識啓蒙を行い、その予防や対応へのさらなる努力を重ねながら、HIVと闘う女性の権利を確保し暴力の撤廃を提唱しています。さらに、政府が女性と女児のニーズを国家計画や予算編成に反映するように、HeForShe イニシアティブを含む活動を通して、男性や男児にジェンダー平等の支援者となるよう応援しています。」